家族の猛反対
母:「お父さん、何言ってんの?」
母:「無理に決まってるじゃない」
母:「去年で懲りたでしょう!」
父:「・・・」
昨年夏、父は富士山登頂を目指して富士山5号目須走口から1人で登り始めました。
その時も家族から猛反対されましたが、反対を押し切って行ってしまいました。
そして1日後、山岳救助隊から5号目付近で頭を怪我して倒れていたと連絡を受けました。
どうも登山道をそれて脇道に行ってしまったようで、そこで転んでほぼ1日うずくまっていたようです。
そこにたまたまカップルが通りかかって山岳救助隊に連絡をしてくれたお陰で一命をとりとめたのでした。
その時は、
母:「もう無理なんだよ、わかったでしょ」
父:「そうだな、無理だな」
と言っていたのでもう諦めたと思っていました。
やっぱり富士登山に行きたい
それが、今年の6月頃になってまた父が富士山に登ると言っていると母から聞きました。
家族みんなで止めにかかりましたが、全く聞き入れる気はないようでした。
ダメだと言っているそばから、バスで富士山5号目まで1人で行って下見に行ったりもしていました。
どうやったら父が富士山の頂上まで行けるか?
これはもう止められないなと思いました。
父はここ数年、いつ死んでもいいという発言を繰り返しています。
今回も死んでもいいから富士登山に挑戦したいという強い意志を感じました。
止めることは諦めましたが、どうやったら父が富士山の頂上まで行けるか?
父が1人で富士山の頂上に行くことは誰が見ても不可能です。
父は腰がだいぶ曲がっており、100メートル歩くのに5分ぐらいかかるようなスピードでしか歩けません。
だから、登るにしても近くの小さい山で何回か訓練してから行くようにすすめたりもしましたが、そうだなと言いつつ何もしません。
そこで、家族でどうやったら富士山頂上まで連れて行けるかを色々考えました。
「人手を何人か集めて神輿のようなもので担いで行こうか」
「ソリみたいなものでみんなで引っ張り上げることはできないか」
「地引網方式で長いロープで大勢で引くのはどうか」
なんてことを真剣に検討しました。
結局、富士山の頂上まで荷物を運んでいるブルドーザーに乗せられないかということになり、
人も運んでくれることが分かりました。
父は「ブルドーザーで富士山頂上を目指す」ことになったのです。
やりたいことをやる
この試みには賛否は色々あるかと思います。
ただ私は、88歳の父のやりたいことを貫く意志の凄みを感じました。
- 人に止められてでもやりたいことを見つける
- ゴールの達成方法は分からないけどできると信じている
- 熱意によって周りの反対者を応援者に変える
やりたいことを実現するための見本のような態度を父は取っているなと感心しました。
この意欲の源泉はなんだろう?
- 死の恐怖を超越しているから
- 年を取ると子供に返るというから、子供のような熱意が芽生えているから
- 生命力が強いから
などが思い浮かぶのですが本当のところは分かりません。
とにかく、88歳という年齢でこの熱意を持っている父を見て、自分もいつまでもチャレンジし続ける年寄りもいいなと思いました。