新柳の教え

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内向型なのになぜか人前に出されてしまう人が読むべき本 「静かな人の戦略書②」

みなさんこんにちは。

 

前回に引き続き静かな人の戦略書の書評をお届けします。

 

www.teachingsofshinryu.com

 

 

 

 

人前で話す極意

著者は内向型でありながら、大勢を前にしたスピーチをうまくこなしています。

自身が培ってきたスピーチの極意を披露してくれているので参考にしていきましょう。

 

何で私がこんなところに?

いかにも東南アジアらしい、気温28度のおだやかな春の日、私はマニラのファイナンシャルセンター内の威風堂々たる国際会議場で、緊張しながら座っていた。

今回の国際フォーラムには、産業界の代表者、学者、非営利団体のリーダーなど約30か国から参加しており、ますます頻発する自然災害をいかにして防ぎ、解決するかを議論すことになっていた。

(中略)

「私の出番が来たら、演台の後ろに隠れてやる」

心のなかで私はそんなことを考えていた。

会議は3日間のタイトなスケジュールで、私の登壇は2日目の午後だった。

(中略)

もうすぐ、私の出番が来てしまう。

気がつけば、さっきから同じことばかり考えていた。

「こんなの、大きな間違いだよ。」

そして、何度も自分に問いをぶつける。

「何で私がこんなところに?」

私にとっては、このイベント自体が天災としか思えなかった。

あまりにも皮肉だけれど。

 

スピーチが苦手な人が経験する心の葛藤の描写ですね。

著者が本質的にはスピーチが嫌いなことがよく伝わってくる話です。

 

「極度の緊張」が襲ってくる

この2か月前、フォーラムの開催にあたって主催者から協力を求められた私は、スピーチの他に司会も引き受けた。

電話で話を聞いたところ、「主催者側は開会の辞、講演者らの紹介、司会進行、質疑応答、閉会の辞のみを担当します。全部合わせても10分もかからないでしょう。」

とのことだった。

だが、その2か月間、私は司会役を引き受けてしまった自分を攻め続けた。

「このフォーラムはすべて英語で行われるんだよ?自然災害なんて、私はまったくの門外漢なのに、他の参加者は全員専門家。しかも、このフォーラムで台湾人は私だけ。うまくやれなかったら、台湾の印象を悪くしてしまう」

主催者側に手紙を書こう、何とか言い訳して辞退しよう、と私は毎日のように思っていた。

その日は体調を崩しそうだとか、出張のスケジュールとかち合ってしまって、フォーラムに参加できなくなったとか・・・。

だが、残念ながら、そんな無責任な手紙は書けなかった。

(中略)

スピーチ原稿の見直しが終わると、全文を暗記しようと必死にがんばった。

荷造りのあいだも、フライトの搭乗前の待ち時間も、機内食を食べているあいだも、マニラの交通渋滞にはまって車内で座っているあいだも、ずっと。

ほんの10分のスピーチなのに、まるで就任演説を行う大統領みたいに緊張していた。

ついに自分の番が迫ってくると、脳卒中を起こすのではないかと思うほど、私の緊張はピークに達した。

 

スピーチが苦手な人にとって、やることが決まってから当日までの間が、1番苦しい時間かもしれません。

僕もスピーチを頼まれたときに、頼まれた日から当日までスピーチ以外のことが手につかずに上の空になることが何度もありました。

でも、こんなに緊張する人なのに、こういう大変そうなスピーチを引き受けるのが僕には信じられない感覚です。

きっと頼まれたら断れないいい人なんだろうと思います。

 

さあ、これからいよいよスピーチへの取り組み方、考え方の紹介をしてもらいます。

 

「緊張は自然な反応」と割り切る

ステージで緊張するかどうかは、内向型でも外向型でも関係ない。

パブリック・スピーキングの専門家であるニック・モーガンは、フォーブズ誌の記事で「人前で話すのが好きな人は10%しかいない」と述べている。

 

つまり、ほとんどの人は人前で話すのが嫌いなんですね。

こういう話を聞くと自分が普通なんだよなと安心します。

 

スピーチをする人が登壇前にソワソワと落ち着かない気分になるのは扁桃体がささやくせいだ。

「行っちゃだめだ!危険すぎる。人目にさらされて何が起こるかわかったもんじゃない。死ぬぞ!」

すると、前頭葉が返す。

「大丈夫だよ。まあ、落ち着いて。ただスピーチをするだけだ。危険なんかない。悪いことなんて、何も起こらないよ。」

つまり、あがり症は人間の生体システムの反応にすぎないとも言える。

あなただけでなく、多くの人が悩んでいる問題なのだ。

 

あがり症は生体システムの反応なんですね。

これは大脳辺縁系と大脳新皮質の戦いともいえます。

人間は大脳辺縁系が優位になると、恐怖などの感情が増幅されますが、大脳新皮質の中にある前頭葉が優位になれば恐怖を抑え込めます。

自分の脳の部位をコントロールできれば問題は解決するということです。

 

それをどうやってやるのでしょうか?

 

「脱感作」と「イメージトレーニング」

「脱感作」とは、自分が恐怖心を抱いている対象に強制的に接触することによって、扁桃体の感度を徐々に下げていく方法だ。

たとえば高所恐怖症の人なら高い梯子を登ったりする。

当然ながら、脱感作の過程では恐怖のレベルを慎重にコントロールし、調整する必要がある。

「猛獣を手なずける」プロセスと呼べは、イメージしやすいだろうか。

 

脱感作(だつかんさ)はウィキペディアによると以下のように説明されている。

脱感作(だつかんさ、desensitization)とは、ネガティブ、嫌悪的、ポジティブな刺激に繰り返し暴露されることによる感情的な反応と定義される。またそれは、とある感情に関連した行動傾向が、実際には無関係または不必要であると判明しながらも、その感情反応が繰り返し誘発される場合にも起こる。脱感作とは、主に個人が恐怖や不安を察知できないように変化していくプロセスであり、心理学者メアリー・カバー・ジョーンズ英語: Mary Cover Jonesによって発見されたジョセフ・ウォルプ英語: Joseph Wolpe(1958)は、不安を引き起こす刺激について段階的なリストを開発し、患者はそれを順を追って克服していくとした不安恐怖症などの管理には薬物療法も存在するが、経験的証拠によれば、脱感作はそれらへの治療率が高く、とりわけ抑うつ統合失調症の患者に対して有効とされる。

 

要約すると、いらないのにどうしても出てしまう反応を出なくする方法ですね。

スピーチのあがり症がまさにこれに当てはまります。

恐れる必要は何もないのに恐れてしまう。

本当に不思議なことですよね。

いったい扁桃体は何を怖がっているのか、これに気づいてあげるのがポイントなのかもしれません。

 

いっぽう「イメージトレーニング」は、完璧な状況や、最高の結果につながるシナリオを何度も想像して、脳内で「正の強化」を起こすものだ。

落ち着いて、堂々とやってのける自分の姿をまざまざと思い描くことによって、エネルギーを奮い起こし、不安を和らげることができる。

 

イメージトレーニングはいろんなところで活用されている方法で、有用な方法であることは広く知られているところです。

ただ、どれだけリアルにイメージできるかがポイントで、難しいところでもあると思います。

著者は、講演の依頼を受けると会場の写真や過去のイベントの動画を送ってもらい、自分が講演している時のイメージをふくらませているそうです。

 

ルーティーンの威力

スポーツでよく使われているルーティーンですが、スピーチでも効果を発揮するようです。

著者のやり方ではなく、一般論として以下の方法が紹介されています。

  • 決まった曲を繰り返し聞く
  • 決まったペンを使う
  • 会場に早めに入る
  • ひとりになる時間を確保する

とにかく自分のルーティーンを決めて、それに乗っ取って行動すると不安の解消につながります。

 

ポジティブな反応を意識する

内向型は、あらゆる瞬間をつぶさに振り返る傾向がある。

私もスピーチを終えるたび、頭のなかでテープを再生してしまうのだが、ときには落胆し悔しさをかみしめることもある。

(中略)

そのいっぽうで、くよくよと反省ばかりしないようにもしている。

(中略)

「落ち着いて、自信に満ちていましたね。すばらしかったです!」

「イベント全体の中で、あなたのスピーチがいちばん魅力的でした」

 

反省は必要だが、スピーチの後はこういうポジティブな反応を振り返ることに時間をかけるとよいようです。

 

努力の9割は「ステージの外」で行う

おしゃべりや雑談にくらべれば、スピーチのほうがはるかにコントロールしやすい。

会場やスピーチの内容はあらかじめ決まっていて、入念に準備しておけば資料の内容も把握できている。

(中略)

もっとも重要なのは準備を完璧にすることであり、それこそが内向型の得意とするところだ。

準備は大変ですが、内向型にとっては演台に上がったときのほうが断然大変です。

だから準備をがんばって演台の上での時間を楽にしましょう。

 

 

 

 

まとめ

NERIS性格診断テストの推計によれば、アメリカでは外向型の人よりも内向型の人のほうが0.004パーセント多いそうです。

超外向型に見えるアメリカ社会でさえ半数は内向型なのです。

日本では内向型の人はもっと多いのではないかと思います。

 

本書で一貫して主張しているのは、内向型は自分の強みを認識して力を発揮してほしいということです。

スピーチのような一見内向型には無理と思えることも、内向型の強みを活かせばうまくいくということを著者は教えてくれ、自分でも実践しています。

 

そして、内向型、外向型のどちらかがいいということではなく、お互いに協力しあっていけばすごい力を発揮するチームが作れることも教えてくれています。

 

本書は内向型の人たちに勇気をくれるいい本です。

 

内向型のひとりとしてみなさんを応援しています。

 

 

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